
健康とは、実につまらない言葉である。
健康診断。
人間ドック。
適度な運動。
規則正しい生活。
どれも正しい。
正しすぎて、まったく興奮しない。
だが、風俗へ行くのも、オナニーするのも、元気にマゾとして遊ぶのも、すべて健康だからできる。
人間は身体のどこか一箇所が壊れただけで、簡単に変態ではいられなくなる。
私は今回、それを身をもって知った。
しかも壊れた場所が悪かった。
── アナルである。
|ケツに心臓が移植された

先日、私のアナルが死んだ。
正確には死んでいない。
私は痔瘻を発症した。
これが痛い。
痛いなんてもんじゃない。
激痛。
猛烈な痛み。
耐え難い痛み。
どれもしっくりこない。
痔瘻の痛みを正確に表現するなら、ケツに心臓が移植された。
これである。
ドクン。
「痛っ!」
ドクン。
「痛っ!!」
ドクン。
「痛えって言ってんだろ!!!」
心拍数と連動して、肛門が全身へ存在をアピールしてくる。
こちらは数十年間、お前の存在などほとんど意識せず生きてきた。
毎日ちゃんと働いてくれていた事には感謝している。
だからって突然、「俺を見ろ!!!」と自己主張する必要はない。
|人類はアナルを中心に生きている

そして私は重大な発見をした。
人間は脳で動いているのではない。
── 人類は肛門を中心に動いている。
立ち上がる。
痛い。
歩く。
痛い。
寝返り。
痛い。
咳。
痛い。
トイレ。
死ぬ。
何をしてもアナルが参加してくる。
最終的に私は歩く事も座る事もできなくなり、ベッドの上で横たわるだけの屍となった。
その時ようやく理解した。
人類が二足歩行を獲得できたのは、脳が発達したからではない。
ケツが健康だったからである。
ダーウィンもここまでは気づかなかったはずだ。
|風俗スタッフ、ケツから滅びる

そして周囲と話してみると、風俗スタッフには意外と肛門周辺のトラブル経験者が多い。
もちろん「座り仕事だから痔瘻になる」という単純な話ではない。
ただ、我々の仕事はとにかく座る。
電話を取って座る。
予約を入れて座る。
LINEを返して座る。
パソコンを見て座る。
キャストさんが出発して座る。
帰ってきても座る。
お客様が絶頂している頃、我々はビジネスチェアに座ってパソコンを見ている。
世間から見れば、エロスと欲望が渦巻く華やかな性産業。
しかし舞台裏では中年男性が ──
「腰が痛い……」
「目がショボショボする……」
「俺、痔になった……」
と話している。
華やかな性産業の裏側を支えているのは、ケツ・目・腰がボロボロになった事務員達なのである。
私は勝手に、これを風俗スタッフ三大職業病だと思っている。
なんとも夢がない。
|チンコは元気だった。ケツが許さなかった。

私は以前から、性欲とは健康のバロメーターだと思っている。
血圧。
血糖値。
肝機能。
コレステロール。
そして、エロい事を考えられるか?
私の健康診断には、この独自項目が存在する。
そこで痛みが少し治まった頃、健康状態を確認する事にした。
── オナニーである。
勃起した。
よし。
チンコ生存確認。
ところが最後までいけない。
身体がフィニッシュへ向かおうとすると、ケツが猛烈に痛い。
脳:「もうすぐ……!」
チンコ:「準備できました!」
ケツ:「中止!!!!!」
全会一致ならず。
射精議案、否決。
マゾヒストだからといって、何でも痛ければ喜ぶ訳ではないのである。
こうして私は、誰に命令された訳でもないのに強制射精管理期間へ突入した。
女王様はいない。
命令もない。
貞操帯もない。
ただ痔瘻だけがいる。
人生で最も色気のない射精管理である。
|世界一色気のないアナル責め

当然、病院へ行けばアナルを診察される。
ここで大変重要な事をお伝えしたい。
病院とM性感では、同じ「指を入れる」でも思想がまったく違う。
まぁ、当たり前である。
M性感のお姉さん達は、こちらの反応を見ながら進めてくれる。
しかし医師の目的は治療である。
焦らしもない。
ムードもない。
官能もない。
患部を確認する。
以上。
診察台でケツを出しながら 「痛い……先生……痛いです……」と悶絶している。
字面だけなら官能小説だが、現場にはエロスが1㎜もない。
そして診察後、そのまま緊急手術。
麻酔を打たれて絶叫。
切開されて絶叫。
膿を出されて絶叫。
絶叫マシンかよ!!!
ジェットコースターなら金を払えば爽快感くらい残る。
こちらは金を払ってケツを切られ、疲労困憊して帰宅する。
二度と行きたくない夢の国である。
|健康とは、変態であり続ける為のインフラである

現在は仕事にも復帰している。
しかし、まだ根治手術が待っている。
今回、私はひとつの真理に到達した。
健康でなければ、性は楽しめない。
アナルプレイ。
前立腺プレイ。
拘束。
焦らし。
射精管理。
身体が動く。
勃起する。
アナルが健康である。
普段は全部「当然」だと思っている。
しかし、その当然はかなり脆い。
女王様から、「しばらくアナル禁止ね♡」と言われたら興奮する。
医者から、「しばらく肛門への刺激は避けてください」と言われても、何ひとつ興奮しない。
なぜだ?
同じ禁止なのに ──
言い方なのか。
白衣なのか。
ゴム手袋なのか。
人類最大の謎である。
だから、M性感ユーザーの皆々様。
全国のM性感で働くスタッフの方々。
ケツを大切にしてほしい。
目も大切にしてほしい。
腰も大切にしてほしい。
健康診断へ行こう。
人間ドックを受けよう。
身体に異変があったら、さっさと病院へ行こう。
これは、健康啓発ブログである。
ここまでほぼケツとオナニーの話しかしていないが、断固として健康啓発ブログである。
健康とは、長生きする為だけにあるのではない。
働く為だけでもない。
家族の為でもない。
もっとくだらない理由で大切にしていい。
風俗へ行きたい。
オナニーしたい。
アナルで遊びたい。
元気いっぱい変態でいたい。
それでいい。
全部、健康だからできる。
健康とは、変態であり続ける為の身体的インフラなのである。
だから私は根治手術を受ける。
健康なアナルを取り戻す為に。
再び元気にマゾヒストを続ける為に。
そして治療を終えたら、胸を張って宣言したい。
「すず代表!俺のケツ、通常営業に戻りました!」
すず代表はたぶん、「そうですか」と苦笑いするだけだと思う。
だが、それでいい。
立てる。
歩ける。
座れる。
排泄できる。
オナニーできる。
元気にマゾれる。
そんな当たり前の日常の中心には、いつだって健康なアナルがいた。
ありがとう、肛門括約筋。
だから頼む。
早く完全復活してくれ。
私はオナニーがしたい。



















