つい先日、娘から唐突に質問された。
「お父さんって、どんな子供だったの?」
この質問、地味に困る。
なぜなら以前にも同じような質問をされているから。
「子供の頃?確か…」
いや、おかしい。
子供の頃を思い出そうとしている人間が、この質問に対して「確か…」は不自然すぎる。
思い出すべきなのは”子供の頃の姿”のはずなのに、探してたのは
「前にこの質問をされた時、自分がなんと答えたか」
だった。
過去の記憶ではなく、過去の回答データ。
ただここで時間をかけるのは不自然なので、反射的にこう答えた。
「朝から晩までサッカーに明け暮れてた」
全くの嘘…とまではいかないが、9割は嘘である。
実際は…
近所の犬の鎖を勝手に外しては、「お前は今日から自由だ」と言い残し、犬より先に逃げているような子供だった。
うるさいおっさんの家に煙幕の花火を投げ込み、「火事だー!!」と叫びながら逃走したこともある。
今思えば、ほぼ事件。
放課後、友だちと一緒に先生の家にいたずら電話をかけ、意味不明な呪いの呪文を唱えた日もあった。
次の日に宿題が出なかっただけで呪文の効果を確信していた。
他にも、学校のサッカーボールの白い部分を油性ペンで黒く塗りつぶし、鉛玉みたいにしていた。
理由は特にない。
ただ「蹴ったら痛そうで面白そう」という子供特有の雑な考えがあっただけだと思う。
ちなみにこの鉛玉サッカーボールが、「サッカーに明け暮れてた話」の1割を担当している。
そんな子供だった僕が今は娘に向かって「嘘はダメ」とか言ってるのだからどうしようもない。
きっとこのような質問はまた数年後にやってくる。
その時のために回答データだけは削除しないよう、しっかり上書き保存しておこうと思う。