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裏切り担当だった魚に今は救われてる話。

by 中井

最近ハマってる食べ物がある。
自宅近所のスーパーに売ってる「かれいのお弁当」。
これが絶妙に旨い。

冷めてても旨いというのがまた厄介で、
「人生、温度じゃないんだな」と、誰にも必要とされていない悟りを勝手に開いてしまう。

しかも599円という安さ。
“幸せの原価とは?”を考えさせられる価格。
もはやこの世でいちばん効率よく幸福を摂取できるのがこのお弁当かもしれない。

先日の休みの日も、お昼にこのかれいのお弁当を買いに行った。
天気も良かったので公園のベンチで食べるのもいいなぁと思ったけど、公園の上空には信じられない数のカラスが飛んでいた。
まるで自然界に処理される前のステージのような雰囲気。

「カラスに狙われながら公園のベンチで急いで弁当を食うおっさん」
この構図だけでホラーだと思いすみやかに自宅へと撤退。

家でゆっくり味わっていると、あまりの美味しさに笑みが漏れてしまってたらしく、たまたま休みだった娘に、
「笑いながらお弁当食べてて怖い」
と注意された。

外で食べてもホラー。家で食べてもホラー。
僕は一体どこで弁当を食べればいいんだ。
火星か?

そういえば昔、“かれいの煮付け”は大嫌いだった。

夕飯前、
「今日はかれいやでー」
と、 母親が声をかけてくる。

その発音が「わざとか?」ってほど実に紛らわしい。

「おっ!今日はカレーか!」
とテンションを上げて食卓へ向かうも、そこにあるのはインド風でも欧風でもない、 ホームセンターの木材みたいな色の"かれいの煮付け”。

「ちっ!お前か!!」
と、何度罵声を浴びせたことか。

気づけばかれいは、僕の中で完全に 「裏切り担当の魚」 になっていた。

それが今となってはこんなにも好きになり、たった599円で幸せまで貰っている。

嫌いだった味が好きに変わる。
それはたぶん、味が変わったんじゃなくて、自分が変わったという証拠なのかもしれない。

気づけばかれいは、大人になった自分の味方になっていた。

(おわり)