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前半終了を待つ男の話。

by 中井

いよいよワールドカップが始まる。
実はサッカーが大好きだ。

特にヨーロッパサッカー。
昔はリーグ戦だのチャンピオンズリーグだの、深夜だろうが関係なく観ていた。

朝4時キックオフ。
試合終了6時。
そのままシャワーだけ浴びて仕事。

日本では朝なのに、頭の中はまだスペインにいる…なんてこともしょちゅう。
バルセロナから帰国してそのまま仕事に向かうスーパーエリートになりきり、通勤中に眠そうにしてる人を見かけては、「甘いな」と、心の中で呟いてた。

何も甘くない。
自分の方がよっぽど甘い。

そう言えば、ワールドカップ期間中、意味不明なルールを設けていたのを思い出した。

サッカーは手を使ってはいけないスポーツ。
だからワールドカップ期間中のみ、自分にもオナ禁を課していた。

ハンド禁止。
あほだ。

ただしハーフタイムだけは可。
もはや何を言ってるのか意味が分からない。

何にせよ、開会式から閉会式まで、『ハーフタイムでしか出してはいけない』という謎の自分ルールを設けていたのだ。

要するに、出したければ試合を見るしかないのである。

試合が始まる。

前半終了。

選手たちがロッカールームへ戻る。
同時に自分もティッシュを持って別の戦いへと向かう。

何がしたいのか。

そして後半開始とともに、何事もなかったかのような顔でテレビの前に戻る。

日本の試合はまだいい。
たいして応援してない国の時なんかは、

「はよ前半終わらへんかな」

と、サッカーが好きな人間とは思えない心理状態になっていた。

前半終了のホイッスルが鳴ると「よし!」

なにが「よし」なのか。

もはやサッカーを見ているのか、ハーフタイムを待っているのか分からない。  
その証拠に、後半始まってすぐに寝てしまうことも多かった。
なんなら前半よりハーフタイムの方が記憶に残っている試合もある。

さて、そんなワールドカップがいよいよ始まる。

さすがに僕も大人になったので、ハーフタイムを楽しみにするようなことはなくなった。
ただ、寝不足の日々がまた始まる気がしている。

(おわり)